本の話 - 宮部みゆき「模倣犯・下」


2001 小学館
宮部 みゆき 先生

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やっと読み終えた
上下巻1,419p

文字通り力作だった

先生渾身の
一大エンターテイメント作品だ


先生もあとがきで触れているが
予定の倍以上のボリュームとなった
理由がよく分かる

先生得意の
・盛り過ぎ
・細か過ぎ
・広げ過ぎ
のフルコースなのだ

しかしながらこのフルコースが
先生独特の
・緊張感
・臨場感
そしてこの手の作品に一番求められる
(個人的には一番求めている)
・説得力
を作り上げているのだろう

コレほどの説得力を持った先生は
なかなか居ない


生意気にも
この作品に苦言を呈すとすれば…
・容疑者二人に対する解剖の記述がない
(かなりの事故であったが解剖や外傷は調べるのが普通では?)
・豆腐屋のおじいさんを使い過ぎ
(最後の場面や犯人に対する説教は要らなかったし
正直見たくなかった、やや興ざめ)
・後半急ぎ過ぎ
(犯人の堕ちて行くさまが、濃密だった前半と比べてやや雑)
この3点が減点対象だ

もちろん
そんな減点なんぞ
まったく気に止まらないほどのストーリー展開だ


最後の最後まで
タイトル「模倣犯」が
この作品にしっくり来ない気がしていた

この読書感想文を書きながら
もしかしたらこのタイトルの意味は
「犯人に対する最大の侮辱」
いわゆる
これほどの史上最悪極悪犯に対する胸糞悪い感情を
先生が読者に替わって晴らしてくれた
のではないかと考えると
あながちそう悪くもないと思えてきた

そう考えると
上巻から続いている
不安感・絶望感・最悪の読後感が消え去り
溜飲が下がる思いなのだ

これも先生の
狙い通りの展開かも知れない

とにかく
こんな凄まじいストーリーを
考えついてしまう先生に只々脱帽だ

もちろん
この作品のスピンオフ作品「楽園」も
読まざるを得ないだろう

参りました


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