映画の話 - 山田洋次「なつかしい風来坊」


1966 松竹
山田洋次 監督


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有島一郎、ハナ肇、倍賞千恵子…
そして山田監督…

これで駄作なわけがない

喜劇と括られるやも知れないが
とても素晴らしい人情映画と言えよう


古き良き人情にあふれた日本の姿
そして
現代では当たり前のような
サラリーマンの悲哀
年頃の娘を持つ父親の寂しさ
が山田監督らしく上手に描かれている

若い頃の山田監督らしい
キツ目の皮肉(噂好きの女性の変わり身の速さなどだ)も
散りばめられているのが今では貴重と言える


タイトルは
風来坊であるハナ肇が主人公かも知れないが
主役は断然有島一郎先生だ

東宝専属である先生を
わざわざ借りてきてまで撮る理由が
この映画には充分ある!

とても素晴らしい演技なのだ

登場した途端
心のガードが下がるのが分かる
一瞬にして心を奪われてしまう

先生の前では
倍賞千恵子もハナ肇も味付けとしかならない


オチはどう持って行くんだ~?と思っていたら
「喜劇一発勝負」のような超皮肉パターンに持っていかず
後の名作「遙かなる山の呼び声」に通ずるエンディングが待っていた

心がホッコリする例の
山田監督得意の電車内でのあのパターンだ


DVDには予告編も付いており
砂浜でハナ肇が仁義を切っているシーンや
また倍賞千恵子に分かりやすく惚れてしまってるシーンも収録されている

野暮過ぎで収録しなかったのだろう
カットして正解だったと思う

山田監督、有島先生、倍賞千恵子の組み合わせで翌年
名作「愛の賛歌」も撮っている
是非ともこちらも合わせて観て欲しい
オススメ映画だ



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