本の話 - 高野和明「ジェノサイド」

2011 角川書店
高野 和明 先生

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第一印象は
「説得力の高さ
怖いほどのリアリティ」だった

そして「長え…」だw
(590ページ!)

しかしながらこの長さ
ほとんど飽きさせず
最後まで緊張感を保ったまま
(↑ここ重要)走り抜けてくれた

久しぶりの筋金入りの
本格ミステリーの登場

wikiによると…
ジェノサイド(genocide)とは
「一つの人種・民族・国家・宗教などの
構成員に対する抹消行為をさす」とのこと…

文章上で説得力を持たせる題材としては
かなりハードルが高いテーマであったが
最後の最後まで
緊張感・説得力を保ったまま
これほどまで書きまとめることが出来たのは
奇跡的とも言えよう

サイエンス(遺伝子・突然変異…)
アクション(特殊部隊・ゲリラ・少年兵…)
それぞれ質の高い濃密な書きっぷりはお見事だ!

この手のジャンルは
細かい調査力や高い説得力が要求され
その膨大な知識を前後の流れを踏まえ
リズムよく描いていかないと
ちょっとした隙で作品全体のテンションが崩れ
一気に興ざめしてしまうリスクがある

この作品は
そのリスクを超えるどころか
新しいハードルを創りあげてしまった

ジェノサイド・レベル」と言うハードル

作者自身
このハードルに苦しむことであろう


文句なしの完璧な作品!とは大げさ過ぎだが
敢えて野暮な苦言を呈そうとするならば
F-22 ラプターの件(これはちょっと強引過ぎるw)
味気ないラストの件(もうちょっと盛っても良かったような…)
と言ったところか…

しかしながら
膨大な調査に裏打ちされた鉄壁の説得力により
許容範囲内に収まる部分だ

更に
この作品の深いところは
そのメッセージ性であろう

作者自身の強い訴え・願いが
題名をはじめ
至る所に散りばめられている
(説得力・調査力・メッセージ性に関しては
参考文献のページに詳しい)

これにより
ありふれた「サイエンス・アクション・ミステリー」ではない
重厚感のある硬派な作品に仕上がっている

そこら辺に転がってる
下手なハリウッド映画よりも
濃密で極上の時間を約束しよう

第65回「日本推理作家協会賞」
第2回「山田風太郎賞」
2011年「本の雑誌」上半期ベスト1位
2011年「日経おとなのOFF」上半期ミステリベスト1位
2012年「本屋大賞」2位
2012年「このミステリーがすごい!」1位
週間文春ミステリーベスト1位[国内部門]

本屋大賞に関しては
何故1位ではなかったのか?と断言できる
(因みに1位はいかにも女性が投票しそうな三浦しをん「船を編む」)

これだけの賞を獲って当たりまえ
正直参りました!

本格派からエンタメ好きまで納得の面白さ!
かなりオススメ

高野和明「ジェノサイド」特設サイト



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